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京都地方裁判所 昭和46年(レ)12号 判決

控訴人

村井昇之助

亀伍一郎

右両名訴訟代理人

高橋進

被控訴人

満島久吉

右訴訟代理人

守屋美孝

主文

原判決を取消す。

被控訴人の第一次請求を棄却する。控訴人両名は、被控訴人に対し、各自金二五万円およびこれに対する昭和四四年八月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人両名の連帯負担とする。

本判決第三項は、被控訴人が控訴人両名に各金八万円の担保を供するとき、仮に執行できる。

事実《省略》

理由

一、被控訴人が、昭和四三年八月三一日、振出日同日、金額五〇万円、支払期日同年一一月三〇日、支払地および振出地京都市、支払場所株式会社大和銀行大宮支店と記載した約束手形(本件手形)を振出したこと、控訴人亀は、本件手形に裏書して、これを京都信用金庫で割引いたこと、同年一二月五日、被控訴人と控訴人亀とが各金二五万円宛を出捐して、本件手形の所持人である右信用金庫に対し、本件手形金五〇万円を支払つたことは、当事者間に争いがない。

二、被控訴本人の原審および当審供述によれば、被控訴人は、控訴人村井の依頼に応じて、同人に金融を得させるため、本件手形を同人に振出交付し、その際、同人は、被控訴人に対し、金五〇万円を、本件手形の支払期日までに支払う旨約し、控訴人亀は、被控訴人に対し、控訴人村井の右債務を連帯保証する旨約したことを認めうる。右認定に反する控訴人両名の原審および当審各供述は採用しない。

(一)  甲が、乙の依頼に応じて、乙に金融を得させるため、乙に対し、約束手形を振出交付し、その際、乙が甲に対し、右約束手形の支払資金として右約束手形金額相当額を、右約束手形の支払期日までに支払うことを約定した場合、乙が右約束手形金額相当額支払の債務を不履行したため、甲が、自己の出捐により、手形所持人に対し、右約束手形金を支払つたとき、乙は、甲に対し、右債務不履行に基づく損害賠償として右甲の支払額相当額を支払う義務がある(被控訴人の第二次請求)。

(二)  上記設例(一)の場合、下記設例(三)の場合と異なり、直ちに、甲乙間に消費貸借の成立を認めえない。したがつて、被控訴人の「上記設例(一)の場合、甲が、手形所持人に対し、手形金を支払つたとき、甲乙間に甲の支払額相当額について消費貸借が成立する」旨の主張(被控訴人の第一次請求)は採用できない。(なお、上記設例(一)の場合、(一)の債権以外の他の債権が発生するか否かは別論である。)

(三)  上記設例(一)の場合と異なり、金銭の消費貸借にあたり貸主甲が、借主乙に対し、金銭交付の方法として、金銭返還の期日より以前の日を支払期日とする約束手形を振出した場合、特別の事情のないかぎり、右約束手形振出交付の日に、右約束手形金額相当額について、甲乙間に消費貸借が成立すると解するのが相当である。

本件は、右設例(一)の場合に該当する。

したがつて、被控訴人の消費貸借に基づく第一次請求は、理由がないから、棄却を免れず、これを認容した原判決を取消し、被控訴人が、控訴人両名に対し、各自右損害賠償金二五万円およびこれに対する昭和四四年八月一六日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める第二次請求は理由があるから、これを認容する。

三、よつて、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第八九条、第九二条、第九三条、第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(小西勝 舘野明 鳥越健治)

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